食品業界について
まずは食品業界はどのような特徴を持っているのでしょうか?
1.景気の変動に左右されにくい食品業界
一般的に、食品業界は不況に強いといわれています。これは感覚的にもお分かりだと思いますが、人が活動するためには一定のカロリーが必要で、景気がいい悪いに左右されません。みなさんもリーマンショックのニュースを見て、株を買うのをやめようと思ったかもしれませんが、ご飯を食べる量を減らそうとは思った人はいないはずです。景気が良くても悪くてもお腹は減るのです。食物の消費量は人口(人の胃袋の数)に比例するというのは直感的にお分かりいただけるかと思います。
2.長期的に国内の食品消費量は減少
食品製造業の安定性は農林水産省のデータから読み取れ、食品製造業の生産額が1990年あたりからおおよそ一定で推移していることがわかります。
しかし、長期的な展望から見ると、日本の人口は減少の一途をたどっており、外国人労働力が大量に流入といったことでもない限り、食品消費量はじわじわと減少することが予想されます。食品メーカー・卸業界の再編やM&Aが盛んなのもこの理由があると考えられます。
3.そんな中で好調な「中食」産業
みなさんは「中食」という言葉をご存知でしょうか?「外食」が外出してレストラン等で食べる、「内食」が家で料理して食べる形態を指すのに対して、「中食」とは外で調理済の食品を購入して家の中で食べる形態を指します。この言葉はコンビニエンスストアやスーパーで調理済、半調理済の食品が普及してきたことにより有名になりました。「中食」業界は堅調に推移していることがわかります。
コンビニで野菜を中心とした惣菜、
パックサラダのラインナップが増加しているのは、
皆さま実感がおありだと思います。
この理由としては、
(1) 共働き世帯の増加による調理時間の短縮化
(2) 健康志向の高まり
(3) 1世帯当たりの構成人数減少
が考えられます。
(1) 共働き世帯の増加による調理時間の短縮
内閣府の調査より、共働き世帯数は20年前と比べ約15%増加しているのがわかります。日清オイリオ調べによると、それに伴って今までかけていた食事の調理時間が減少しており、夕食調理にかける時間は30分以内という女性が22%増加しています。
(2) 健康志向の高まり
その一方で、健康志向は高まっており、サラダを手軽に取りたいという需要が高まっていることも読み取れます。
(3) 1世帯あたりの構成人数減少
皆さまの家族は何人家族でしょうか?内閣府の調査から、人口は減る一方、単身世帯、2人世帯が非常に増えていることがわかります。
共働き世帯が増え、女性が調理する時間を短縮したいという要望があり、でも健康的な食事は取りたい。そんな1人暮らし、夫婦2人のみのご家庭にとって、食べきることのできないキャベツ1玉を購入することは経済的ではないと判断される方が増加しています。
手軽に24時間空いているコンビニエンスストアでパックサラダや惣菜を買おう。スーパーでよく見かける野菜炒めセットのような、少しでも切って洗っての調理がいらない半調理済み食品を買おう、と考えるのではないでしょうか。こういう背景をもとに、「中食」産業は今後さらに伸びていくことが考えられます。
ここまでは食品製造業界、「中食」産業をお話ししてきました。では、一見順調に見える「中食」産業が抱える課題はないのでしょうか?ここからは「中食」産業のなかでもサラダのような生鮮品を扱う分野が抱える課題についてお話しします。
「中食」産業が抱える課題
一般的に中食産業は労働集約型産業と言われています。これは、特に農作物を加工されているところで顕著ですが、人頼りになってしまう作業が多く発生するためです。例えばキャベツと一言で言っても大きさや形が個体によって少しずつ違い、加工に個体ごとの判断を必要とするため機械化、自動化が難しい産業ということはお分かりいただけるかと思います。
このような労働集約型産業では雇用者を大量に抱えなければならず、一般的には生産性、支払われる賃金は知識労働型産業と比較すると低くなってしまうのが現状です。また、サラダのような生鮮品は作ったその日に出荷が基本となるため、作業が深夜になる、24時間操業という企業も多く、作業員を確保するのに非常に苦労をされている企業が多くみられます。
さらに日本では働き手である若年層の人口が減少し続けているという背景もあり、慢性的な人手不足に陥っているようです。
高まる機械化、自動化への要望
中食産業では労働集約型産業からの脱皮、人手不足の解消を目的として、機械を使っていきたいという要望が近年高まりつつあります。機械化、自動化はまだまだ未開拓な分野ですので、食品加工機械産業はこれからまだまだ成長していく産業だと予想されます。